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幕間のメモ帳

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2005年 06月 19日

演劇企画集団THE・ガジラ「死の棘」

17日(金)、シアタートラムにて、演劇企画集団THE・ガジラ「死の棘」、観る。

舞台は水に囲まれた円形の舞台、奥から橋掛かりが延びて本舞台に通じている。この円形の舞台で、トシオとミホの終わることのない壮絶な闘いが続く。それを三人の敏雄(海軍中尉、学生服、背広)が、ある時は、敏雄の分身として、またある時は、敏雄とミホの周囲の人間に扮しながら、見つめている。(この三人は2時間20分の上演中引込みはない)鐘下辰男氏の演出は、永遠に続くかのような男と女の修羅場を通じて、出会うことのできぬ現代人の焦燥感を描き出したのではないだろうか。

体と体がぶつかり合い、はげしい言葉でミホが罵り、その責めにじっと耐え続けるトシオ。それは、トシオの浮気の贖罪というよりも、むしろ、出会いたくとも出会うことのできぬ、精神の交わりを欠いた男と女二人の、崇高な愛の儀式といった様相を帯びている。

三人の敏雄は、作者・主人公の時間を解体して、空間に客観性を与えた。ちょうど能のワキのような役割。

そして、この舞台では、水が重要な仕掛けを果たす。水は、奄美を囲む海、闘いに疲れた身体の渇きを癒すこともあるが、男と女の責めの道具にもなり、また、闘いを中断させるためにワキ三人から修羅のリングに投げ込まれるタオルにもなる。主演の二人は、何度も水を浴び、びしょびしょになるが、板の舞台を滑りながら狂う様は、近松の「女殺し油地獄」を連想した。

近代文学屈指の情念を、現代劇に昇華させた充実の舞台。高橋惠子氏、松本きょうじ氏、高田恵篤氏、石橋祐氏、小嶋尚樹氏の出演。

演劇企画集団THE・ガジラ「死の棘」_d0003835_9233759.jpg


by yugikukan | 2005-06-19 09:39 | 演劇 


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