幕間のメモ帳

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2010年 04月 12日

しだれ桜

【今週の観劇作品】

4月8日(木)SPINNERS公演『トマトのいろは』作:東俊樹、演出:岡本高英 於:劇場MOMO
4月8日(木)JAPLIN公演『岡と土岐』作・演出:桑原秀一、出演:日笠圭、島袋英士、春延朋也、武志道、渕野陽子、本野春夫、蓬莱照子、田中香子 ほか 於:中野ザ・ポケット 
4月9日(金)名取事務所公演『虚空遍歴』脚本・作詞・演出:ジェームス三木、出演:渡辺聡、坂東扇菊 ほか、於:あうるすぽっと
4月10日(土)上方舞友の会『しだれ桜の夕べ 舞散華』舞:吉村桂充 於:南蔵院・本堂
4月10日(土)千賀ゆう子企画「S」シリーズ『卯月 浮世の憂き ウキウキ う? 生まれるとき? 七人の役者と楽師(チェロ)による即興的演劇的上演』構成・演出:千賀ゆう子 楽師:入間川正美(チェロ)於:ストライプハウスギャラリー
4月11日(日)INSLA講演会『日本の農と食を考える-農・能・脳から見た-』於:東京大学 安田講堂


土曜日は、板橋名所十番にも入るしだれ桜の名所、南蔵院というお寺で、ヒデオゼミでともに学んだ吉村桂充さんの舞の会があった。地唄「ながらの春」「鉄輪」という対照的な演目を一時間わたり、見事に舞った。
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日曜日に出かけた第3回INSLA講演会は、午後一時から六時過ぎまで東京大学安田講堂で五時間に及ぶ催しだったがとても刺激的だった。

免疫学者であり、新作能なども書かれる多田富雄先生の農業、能楽、脳医学をクロスオーバーさせたイントロダクションから始まり、第一部で野村万作氏の三番叟の実演が行われた。万作氏は齢八十という御年を全く感じさせない力強い演技だった。

第二部では農業についての講演として、食を通じた地球のサイクルの話を上野川修一氏が、主に政策の観点から農と食についての話を生源寺眞一氏が、バイオアグリの種とその技術について本澤安治氏が、実際に農業を営んでいる立場から松本明氏が、それを補足した肥料の話を辻彰氏が語りそのどれもが普段接する事のない興味深い話だった。松本氏の実践される農法のすばらしさには大変興味をもった。

第三部は、脳という観点で、農業の持つ精神的な意味合いを加藤登紀子さんがお話された。
討論会では、三番叟で大鼓をうった大倉正之助氏も加わり、音楽や楽器が農業に与えた影響、そして、その中から知りえた芸術の姿についてのお話に感銘を受けた。

大鼓の皮は馬の皮であり(ばちで叩く太鼓は牛の皮)毎回、解体する。それは、皮を休めるという事だそうで、生きたものとして楽器を扱う、それが何百年も使い続けられる理由だそうだ。

また皮の状態は、季節ごとに湿気などの影響を受け、ずいぶん違うそうだ。それをかつてはどんな時にでも同じ音を出そうと努力していたり、ある音に絶対を求めてそれ以外は認めないという立場で演奏を追及していたが今はそうではないと言う。

季節ごとの音をあるがままに認め、その会場の特性、お客の醸し出す雰囲気、演者の演技などさまざまな事柄の響き、「調和」を大切にするという。調和の「調」は「調べ」である。演奏は遊びであるという自由な捉え方をしているのだろう。私などはまだまだそこまで余裕はない。どうしても絶対を求め窮屈になってしまう。

近代において、効率化、生産性拡大の追及が、元来文化とも密接に繋がっていた農業を今の状態にしてしまった。しかし、行政に振り回されない自立した発想のもとで、若者達が里山に暮らし始めていることも伝えられた。生きる事と密接に繋がった農業、芸能、科学、それを頭の片隅に置きながら今後の活動を進めていきたい。

この講演会には、稲作についての発言も多い作家井上ひさし氏にも参加を依頼をしてたそうだが、闘病中で断られていたらしい。そして井上氏は、この会の二日前にお亡くなりになってしまった。ここに井上氏がいたら、またどんな話が聞けたのか、残念である。戦後の演劇界に多大な影響を与えた劇作家に合掌。
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by yugikukan | 2010-04-12 00:00 | 日記


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