幕間のメモ帳

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2011年 04月 13日

和合亮一さんのツイッター 

詩人和合亮一さんは福島に住んでいる。

震災以後、かの原発事故で生活は一変した。奥さんとお子さんを山形に避難させ、放射能の危機に直面しながら、詩人は言葉を石礫のように書き続けている。

@wago2828

にその言葉は貯蔵されていく。


和合さんの詩が好きでした。

でも今、彼の言葉に凄みが増して、驚くばかりの詩が生み出されています。



ここにその一部を紹介したくなりました。

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 放射能が降っています。静かな夜です。

 
 だいぶ、長い横揺れだ。賭けるか、あんたが勝つか、俺が勝つか。けっ、今回はそろそろ駄目だが、次回はてめえをめちゃくちゃにしてやっぞ。

 
 横に揺れる幅が相変わらずに大きい。何かに乗っているような心地になる。馬の背中が地だとすれば、私たちは騎手。悲しい騎手。


 茶の間の時計と本棚の小さな時計が2時46分を指したまま、激しく転がっていた。その後に駅に行ったが、巨大な時計がやはり2時46分を指したまま、止まっていた。明日は2時46分に目をつむろう。

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詩の礫
 
 あなたはどこに居ますか。私は暗い部屋に一人で言葉の前に座っています。あなたの言葉になりたい。
 あなたはどこに居ますか。私は閉じ込められた部屋で一人で、言葉の前に座っている。あなたの閉じ込められた心と一緒に。
 世界はこんなにも私たちに優しくて、厳しい。波は今もなお、私たちに襲いかかろうとしている。あなたはどこに居ますか。私たちの寄る辺はどこ?
 
 南相馬市の夏が好きだった。真夏に交わした約束は、いつまでも終わらないと思っていた。原町の野馬の誇らしさを知っていますか?
 南相馬市の野原が好きだった。走っても走ってもたどりつかない、世界の深遠。満月とススキが、原町の秋だった。
 南相馬市の冬が好きだった。少しも降らない冬の、安らかな冷たさが好ましかった。原町の人々の無線等の自慢話が好きだった。
 
 あなたはどこに居ますか。あなたの心は風に吹かれていますか。あなたの心は壊れていませんか。あなたの心は行き場を失ってはいませんか。
 私は見えない影に打ち震えています。それは真昼の影? 心の影? 退避命令? 言葉の影?
 命を賭けるということ。私たちの故郷に、命を賭けるということ。あなたの命も私の命も、決して奪われるためにあるのではないということ。

 生まれ育った山河には何の罪もない。変わらない起伏は原町の心そのもの。今また、南相馬市を避難していく人々の思いのやりきれなさは、涙しかない。

 馬のいななきは何も変わるまい。夜ノ森の桜は何も変わるまい。潮鳴りはがれきを悲しく濡らしながらも、時を削らない。

 お願いです。南相馬市を救って下さい。浜通りの美しさを戻して下さい。空気の清々しさを。私たちの心の中には、大海原の涙しかない。

 私は一人、暗い部屋の中で言葉の前に座っている。あなたはどこに居ますか。言葉の前に座っていますか。

 言葉の後ろ背を見ていますか。言葉に追い掛けられていますか。言葉の横に恋人と一緒にいるみたいに寄り添っていますか。それとも言葉に頭の上から怒鳴られていますか。

 僕はあなたです。あなたは僕です。

 僕はあなたの心の中で言葉の前に座りたいのです。あなたに僕の心の中で言葉の前に座って欲しいのです。生きると覚悟した者、無念に死に行く者。たくさんの言葉が、心の中のがれきに紛れている。

 僕はあなたは、この世に、なぜ生きる。僕はあなたは、この世に、なぜ生まれた。僕はあなたは、この世に、何を信じる。

 海のきらめきを、風の吐息を、草いきれと、星の瞬きを、花の強さを、石ころの歴史を、土の親しさを、雲の切れ間を、そのような故郷を、故郷を信じる。

 2時46分に止まってしまった私の時計に、時間を与えようと思う。明けない夜は無い。

 詩の礫(シノツブテ)
 覚書1 一週間のうちに、全てを奪われてしまったような気持ちになりました。車で暮らし、避難所で暮らし、余震と放射能に脅え、これが被災の真顔であると実感いたしました。

 覚書2 家族は遠い街に避難をさせました。ここまで終わり何かを覚悟しました。この時、ガレキのようなものを吐き出したいと思いました。怒りと悲しみしかありませんでした。

 覚書3 死を意識した時、昂然と何かが湧き上がりました。少しだけ誘われてやってみたツイッターを開きました。2時間、書き続けました。

 覚書4 翌日(17日)、様々なフォローとメッセージと励ましの連絡をいただきました。消息不明を知人や全国の詩人たちがとても心配してくれていました。なんとも役立たずの人間と思っていたのに、私には消息すら伝える力がなかったのです。

 覚書5 ご心配をおかけした方々に深くお詫びします。そしてツイッターの言葉たちによって、ガレキの世界に立つ決意を持ち始めました。

 覚書6 非力な役立たずの僕に出来ることは、それでも、詩を、言葉を書くこと。そんなふうに大きく変わっていきました。

 覚書7 混迷している精神状態の私を、全国の詩人のみなさんは本当に心配してくれました。本当にありがとうございました。良く分かりました。私は一週間前の2時46分から、ずっと眠っていました。眠れないのに。

 覚書8 フォローは2日目で700件に近づこうとしていて、これが大きい数なのか少ないのか分かりませんが、数え切れないほどのダイレクトメッセージの中に「力をもらった」という言葉がある限り、もう一度、自分をやり直してみようと思います。

 覚書9 私の書いたものをについて、精神状態を心配して下さる方もずいぶんといらっしゃるので、ルールを決めさせていただきたいと思います。これまでの詩に近づけた呟きを「詩の礫」とします。これは詩なので、ありのままに書きますが、言説に狂気と理性とが絡み合います。心配をしないで下さいね。

 覚書10 「詩の礫」の前後に、これからはきちんと前書きか後書きを書きます。これを「前記」とか「後記」などと断ります。こちらを前か後に読んで、和合は大丈夫なんだと安心して下さいね。

 覚書11 「覚書」は、「詩の礫」と「前記・後記」の真ん中で、レフリーのようなものです。これから先に用途かあるのか、どうなのか、分かりません。





続く・・・


 
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by yugikukan | 2011-04-13 11:37 | 日記


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