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幕間のメモ帳

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2011年 06月 20日

かさぶたは渇いてきたけれど 再び南相馬市へ

19日、日曜日。東京は前夜の雨で道が濡れているが、早朝になって晴れ出す。

この日は、高速道路の料金、上限1000円が終わる日。

「つぶやきと叫び」の出演者と共に、南相馬へ再び繰り出す。

車二台で出発。

中嶋義広さんのワゴン車とレンタカーの10人乗りワゴン車。

中嶋号には、柘植、増山、藤田、岡本と個性あふれる男優が5人が乗車、レンタカーには男性が4人、佐々木、篠本、緒沢、それにドライバーをかってでてくれた秋本泰英さん、女性が5人、千賀、横尾、古田、加藤、川居、の合計9人が乗車した。

それぞれ別の待ち合わせ場所から出発。

東北自動車道、蓮田サービスエリアで7時15分に待ち合わせる。

時間ぎりぎりだったレンタカー組に対して、中嶋号は余裕の到着。

そこからは北へ、二台が連なっていく。


蓮田から約3時間、福島西ICで一般道へ降りて、国道144号線から川俣で県道12号線に入る。

県道12号は、避難区域、飯舘村を回避したルートだ。

一般道を走っていると、一か月前に来たときよりも、さらに人の気配がないことがわかった。

無人の村の無言の怖さ、避難が拡大している。


山間を一時間ほど走り、南相馬原ノ町に到着。

かつて僕の生徒だった井出百合子のダイニングバー「キャンディキャンディ」で一休み。

そこに福島民報、福島民友の記者が取材に訪れ、一同南相馬の海岸へ。


津波にのみこまれた海岸線。

かつては防風林が茂っていて、海岸は見通せなかったと、民友の記者さんに教えてもらった。
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そこでお話をした後、記者両名とは別れ、二台の車は鹿島へ。

そこは前回にも訪れたところ。

海岸には港があったので残骸になった船がたくさん放置されている。一か月たった今も状況は変わっていない。
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鹿島にある小学校にも立ち寄った。

泥に汚れた水線が黒板に悲しいラインを引いている。

沈黙する校舎では、子供たちの声の木霊が、笑い声ではなく、叫び声になって聞こえてくるようだった。

     
  青空教室は崩壊した!(和合亮一「バンザイ、バンザイ、バンザイ」)


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国道6号線沿いのラーメン屋さんで昼食を済ませ、松川浦へ、壊滅状態の湾岸の旅館に時々人が働いている。小さな復旧への営みが毎日繰り返されているのだ。
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相馬港では、大きな建物がズボンを脱がされ海から来る風に身震いしているようだった。
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海にのまれた新地駅、住宅街の痛々しさがまだ残る亘理町を経て、陽が傾きかけた頃、仙台に近い名取へ。まさに壊滅状態。あの頃からはずいぶん片付いているだろうに、いまだにその傷痕は痛々しい。

小高い丘の上、慰霊碑のある日和山で、線香を手向ける。
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地震と津波は、大地を切り裂き大きな傷痕を残していった。

震災から二か月後、稽古開始前にひとりで南相馬に行ったときは、その傷痕に、かさぶたができてはいたものの、無理やり剥がせば、血が噴き出てきそうな気配があった。

そして震災から三か月、気候のせいもあるのだろう、あのジクジクしたかさぶたはずいぶん乾いているようだった。

しかしそれは大地が快癒しているのではない。

栄養が与えられず、カサカサになって死にそうな皮膚なのだ、衰弱している大地だ。
放射能という間違った薬を処方されたところでは、傷はかえって悪化している。


海江田万里経済産業相が電力各社の安全対策は「適切」とし、原発再稼働の意向を表明した・・・


和合さんのつぶやいた「詩の礫」を、遊戯空間は演劇にする。

「詩×劇 つぶやきと叫びー深い森の谷の底で」

これが、今私たちにできることだ。

被災した詩人のつぶやきを、演劇人は叫びとすることができるのか。


演劇人よ、事態の把握にとらわれて、震災を観念化してはいけない。

演劇は、行動だ。

身体の運動にこそ、意味がある。


自らの眼で見れば、そのことが実感できるはずだ。

今こそ東北へ向かえ、演劇人よ。
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by yugikukan | 2011-06-20 11:18 | 日記


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