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幕間のメモ帳

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2012年 05月 08日

ここ一か月を振り返る

【今週の観劇作品】

5月6日(日)授業フェスティバル公演『授業』作:イヨネスコ 於:神楽坂ディプラッツ 
3月25日(日)『魔笛』演出:ピーター・ブルック 於:さいたま芸術劇場
 

『授業』公演が終わった。
千賀ゆう子企画での二度目の演出、そして、二度目の出演。

そして、いよいよ『隅田川の線香花火』の稽古が来週始まる。

この数か月、演出というものについて、あらためて考えさせられるような稽古が続いた。
それは、普段作業をする現場とは違ったルールのもとに作業をしなければならなかったからだ。

雑感。

演出家のもつ決定権とは何か。

演出は現場で様々な問題に決断を迫られる。しかし演出家の担う決定権が現場で機能しなくなった場合、現場は秩序ある進行を継続できるかどうか。それは難しいと言わなければならないだろう。

言い換えれば、演出家がすべき準備を怠ってはならない、ということかもしれない。

戯曲に対する理解、そして、戯曲に対するアプローチの方法、そしてその具体的な作業行程、これらが、確実に準備され、参加する俳優、スタッフの理解を得なければならない。

そうでなければ、演出家が決定権を持つことの意味合いがなくなってしまう。

また、演出家は時間の管理を徹底しなければならない。

公演というものは、初日という、現場サイドからすると、締切と呼んでいいものがある。
締切に如何に間に合わせるか、これも演出家が充分な準備をしてはじめてできるものだ。

しかしすべての作業は日程通りに進行するわけではない。
なんらかのアクシデントで稽古ができないということもありうるからだ。

そういったことにも配慮した危機管理が求められる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『授業』フェスティバルに参加して思うこと。

翻案というものはどういったことなのか。

演劇を誰に届けようとしているのか。

オリジナルとの距離感。

『授業』を知らない観客に対してはどうアプローチすべきか。

テキストの持っている言葉の力を俳優の身体パワーの引き金にできるかどうか。

言語論にこそ、こだわった作業をしなければならないはず。

言葉の力を上回る身体言語を提示できているかどうか。
オリジナル作品の身体表現による矮小化は避けなければならない。

などなど、雑感。

# by yugikukan | 2012-05-08 11:34 | 日記
2012年 03月 24日

震災後、一年・・・

【最近の観劇作品】

3月23日(金)ドアーズ公演『朝に死す』『葉っぱのフレディ』作:清水邦夫、レオ・バスカーリア、演出:福沢富夫、於:銀座みゆき館劇場 

3月21日(水)メガバックスコレクション公演『HOTEL CALL AT』作・演出:滝一也 於:阿佐ヶ谷アルシェ 

3月19日(月)劇団花鈴&演劇工房 GrowthRing公演『石灯る夜』作:中澤日菜子、演出:近藤妙代、、於:遊空間がざびぃ

3月10日(土)劇団銅鑼公演『砂の上の星』脚本:いずみ凛、演出:木村早苗、於:スペース雑遊

3月10日(土)梅左事務所『藤戸 唄浄瑠璃狂言』作・演出:堀川登志子、於:シアターⅩ

3月9日(金)劇団鈴木秀暢『昨日と今日の果て』作・演出:鈴木ヒデマサ 於:ひつじ座

3月4日(日)東京アンサンブル『荷』作:チョン・ボックン、演出:坂手洋二 於:ブレヒト芝居小屋

3月2日(金)龍昇企画『バウンティフルへの旅』作:ホートン・フート、翻訳・演出:栗原崇 於:スペース雑遊

2月26日(日)テラ・アーツ・ファクトリー『最後の炎』作:デーア・ローアー、構成・演出:林英樹、於:dー倉庫

2月24日(金)わらび座『ミュージカル アテルイ 北の耀星』原作:高橋克彦、脚本:杉山義法、演出:中村哮夫、於:新宿文化センター 大ホール

2月19日(日)東京ハイビーム『オー・マイ・ゴースト』作・演出:吉村ゆう 於:MAKOTO シアター銀座


3月17日(土)、18日(日)。
仙台で「詩×劇 つぶやきと叫び」を上演する。
和合亮一さんが、ツイッターに、つぶてを投稿しはじめて、一年後にあたる、一周年に被災地での上演。
東京の俳優とゑ仙台の俳優による合同公演。

長い間、仙台の演劇人との交流を続けてきた千賀ゆう子さんとTheatre Group“OCT/PASS”の石川裕人さんの声掛けで実現した企画です。
仙台で活躍する、劇団I.Q150の丹野久美子さん、SENDAI座☆プロジェクトの樋渡宏嗣さん、渡部ギュウさんらが参加しました。(Theatre Group“OCT/PASS”絵永けいさんは、本番直前に入院し参加できなくなってしまいました)

2月中旬から毎週末、仙台に行き、稽古をしました。但し、演出の私だけ。東京、仙台での稽古は、ともに代役をたてて、行いました。
しかし、仙台に行くたびごとに雪が降り、高速バスを使った日、5時間の行程が10時間かかってしまった日もあったりして、なかなか苦労しました。石川さんら仙台の方々には、「雪男」呼ばわりされてしまいました。

さて、この作品は、いまだ解決をみない震災を扱っている作品だけに観客の方々の反応も非常にストレートです。
昨年の東京での公演の際にもありましたが、この作品がもっている一種の代弁作用によりカタルシスを得たという評価、災害当時を記録する価値などが、肯定的な評価としてある一方、傷ついた心の癒えぬ方々に対して追い打ちを掛けているとの批判的な意見もありました。

東京公演では、和合さんの個的な視点に違和感を感じる方もいた。「実際はそんなんじゃない」という声。今回は、そういった意見は少なかったような気がします。構成上、和合さんの視点であること明確にしたこと、また、震災一年たって和合さんの言葉がある種の普遍性を獲得し始めているということもあるかもしれません。

今回の仙台公演で、東京の者に震災の苦しみがわかってたまるか、という厳しい意見がありました。

逆に、この作品は、ぜひ継続するべきだという意見もありました。
特に被災地にほど遠い西日本で上演をすべきである、という声。

「認めたくないけど認めるしかないんでしょうね」

つぶてのなかにこういう一節がありますが、放射能、津波、余震の被害に苦しむ東北の方々のやりきれなさ、いらだちは、こういったねじれた言葉にあるのでしょう。

「詩×劇 つぶやきと叫び」は、当事者としては、受け入れがたい部分もあるが、様々な想いを代弁しているところもあり、だからこそ、被災地ではない他でやってほしい、そうすれば応援するよ、といった心情でしょうか。

震災直後、生まれたこの作品は、機会と場所を変えて、問われ続けなければならない作品なのかもしれません。

その土地その土地での評価は、震災の実感を映し出す鏡となって、私達作り手にも反射してきます。それが社会を映し出す鏡と考えることもできるかもしれません。

# by yugikukan | 2012-03-24 09:24 | 日記
2012年 02月 06日

怒涛の一か月

【最近の観劇作品】

1月19日(木)劇団サンスユ公演『奇妙旅行』作:古城十忍、演出:リュ・ジョヨン 於:あうるすぽっと 
1月23日(月)劇団太陽族公演『異郷の涙』作・演出:岩崎正裕 於:あうるすぽっと 
1月27日(金)『トンマッコルへようこそ』作:チャン・ジン、演出:東憲司 於:あうるすぽっと
2月4日(土)桐朋学園短期大学卒業公演『夢、「オセローの稽古」の』構成・演出:福田善之 於:せんがわ劇場


年が明けると、第二回日韓演劇フェスティバルの運営スタッフとして、慌ただしい日々が続いた。
身をすり減らしてきりきりした日が続いたが、大きな収穫もあった。

芸人「マルセ太郎」と出会えたことだ。

といっても、マルセさんはもう十年前に亡くなっている。

回顧展、ゲストトークをやるにあたって、過去の作品の映像資料、著作、そして、生前のマルセさんの関係者と出会えたことが、とても素晴らしかったのだ。


「思考する芸人」マルセさんは、「記憶は弱者にあり」と語り、晩年、社会的な弱者にまなざしを向けた喜劇を作り続けた。

また、「スクリーンのない映画館」という、一人芸で瞬く間に全国にファンを作った。
マルセさんに魅せられた彼らは、マルセ中毒と自称する。

回顧展では、「スクリーンのない映画館 泥の河」を上映した。

私は4度目の視聴だったが、また泣けた。

たぶん、もう一度観ても泣いてしまうだろう。

それほど素晴らしい作品だ。

生前のライブを観たかった、実に残念。


そして、これも手前味噌になってしまうが、伝手あってお招きした新内の岡本宮之助さんが、
故岡本文弥師匠の「ぶんや・ありらん」を披露してくれた。

文弥さんが、98歳の時に作った新作新内。
従軍慰安婦を扱っている問題作。「謝罪寸志」の副題がついている。

文弥師匠の芸を受け継ぐ気合の演奏だった。



日韓フェスも二週間の東京開催が終了し、今は大阪で、ほどなく、福岡でも開催される。


さて、そんななか、遊戯空間の次回作の準備が、急ピッチで進められている。

「詩×劇 つぶやきと叫び in 仙台」

2012年3月17日(土)、18日(日)13:30開​演 於:仙台文学館

作:和合亮一「詩の礫」「詩ノ黙礼」による

構成・演出:篠本賢一

出演:佐々木梅治、千賀ゆう子、藤田三三三、加藤翠、篠​本賢一 絵永けい、丹野久美子、樋渡宏嗣、渡部ギュウ

演奏:藤田佐知子

仙台演劇を代表する方々とのコラボは、充実した作業になりそう。

昨年の座・高円寺バージョンの台本に手を加えている。

乞うご期待!

# by yugikukan | 2012-02-06 02:32 | 日記
2012年 01月 03日

新しい年に

新しい年になりました。

昨年はかの震災により、ものを考える尺度に大きな変化がありました。

地震津波の災害に対して、自然のなかに生まれ生きている我々の存在を強く感じたし、それに続く福島第一原発の事故は、今もって解決の道筋を模索している状態、このような問題に目を向けることなく暮らしていた自分自身の問題意識の甘さを実感せざるをえません。

ここ数年の演出作品でも、自然との共生ということでいえば、泉鏡花は「夜叉ヶ池」「天守物語」などでその問題を描いていたし、圓朝の怪談噺にも人間という存在の危うさ頼りなさ、決して、驕ってはいけないことなどを描いていました。それらの作品をもう一度読み直してみたいと思います、

また、芸術というものの役割が如何なものなのか、そこにも踏み込んでいかなければなりません。

政治、経済、また科学、医学などと芸術のコラボレーションは、今後の大きな課題となりそうです。

心のない科学技術が、政治に利用され、偏った経済活動に拍車をかけ、芸術はそれらのパトロンに堕していたのではないか、そんな気がします。

そういった歴史のツケがかの原発事故につながったのではないか。

芸術は直接、生活に反映されたり、衣食住を満たしたりすることはできませんが、人間がどうやって生きていったらいいのか、その理想を掲げることはできるはずです。



Imagine
想像してごらん

John Lennon
ジョン レノン

Imagine there's no heaven
It's easy if you try
No hell below us
Above us only sky
Imagine all the people
Living for today
想像してごらん
天国はないと
想像してみるのはたやすい
みんなの下に地獄はなく
みんなの上には空があるだけ
想像してごらん
みんな今日のために暮らしていると

Imagine there's no countries
It isn't hard to do
Nothing to kill or die for
And no religion too
Imagine all the people
Living life in peace
想像してごらん
国はないと
想像するのは難しくない
殺す目的も死ぬ目的もない
宗教もない
想像してごらん
みんな平和に暮らしていると

You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one
I hope someday you'll join us
And the world will live as one
君は僕を夢想家と言うかもしれない
でも僕一人だけじゃないんだ
いつか仲間に加わってほしいなと思う
そしたら世界はひとつとなって生きる

Imagine no possessions
I wonder if you can
No need for greed or hunger
A brotherhood of man
Imagine all the people
Sharing all the world
想像してごらん
所有もないと
君にできるかな
貪欲も飢餓も生じる必要がない
人類の兄弟愛の世界だ
想像してごらん
みんなが世界を共有していると

You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one
I hope someday you'll join us
And the world will live as one
君は僕を夢想家と言うかもしれない
でも僕一人だけじゃないんだ
いつか仲間に加わってほしいなと思う
そしたら世界はひとつとなって生きる


【最近の観劇作品】

12月8日(木)劇団東演公演『つがいのエプロン』作:堀江安夫、演出:原田一樹、於:東演パラータ
12月25日(日)パラダイス一座公演『オールド・バンチ4 男たちの挽歌完結編』作:山本清多、佃典彦、演出:流山児祥、於:下北沢スズナリ


2011年12月28日。
昨年に続き、第六回高校生映画コンクール「映画甲子園2011」の審査員を務める。
今年も素晴らしい作品、若き才能に多く出会えた。

# by yugikukan | 2012-01-03 13:38 | 日記
2011年 12月 06日

祝婚歌

12月3日夜、和合さんより素晴らしいプレゼントを頂いた。


祝婚歌

鳥がさえずる時に
白い波が押しよせて引いてゆく瞬(まばた)きに
星と月 また少し 明るくなる今に
あなたが私を見つめ返してくれる幸福を

約束の後で 新鮮な大地で
芽吹く野原で 足跡を重ねて
あなたとならどんな大河でも渡ってみせるから
手と手を結んで時に強く固く
         時にそっと出来るだけ
                  そっと

確かめよう 私たちの命を魂を
言葉を 宇宙を 海のかなたの美しい帆を
家族である喜びと誇りを
新しい生命を 新しい太陽を
           果てのない青空を


風が吹きはじめた時
目が覚めた時
花の影にほほえむ時
嬉しくて涙がこぼれてしまう時

私はあなたを見つめる

あなたは私を見つめ返してくれる

この時に

鳥がさえずる
白い波が押しよせて引いてゆく
星と月 また少し 明るくなる
あなたが私を見つめ返してくれる

和合亮一


【最近の観劇作品】

11月25日(土)劇団テアトル・カナ公演『ライロニア』於:シアター×

12月1日(木)青年劇場公演『シャッター通り商店街』作:高橋正圀、演出:松波亮介、於:練馬文化センター 小ホール 

12月3日(土)スパイラルムーン公演『キネカメモリア』作:横田雄紀、演出:秋葉舞滝子、於:劇小劇場 


# by yugikukan | 2011-12-06 10:19 | 日記